みなさん、こんにちは!
HRマネジメント編集部です。
2026年10月1日、改正労働施策総合推進法が施行され、カスハラ対策と求職者等へのセクハラ対策が、すべての事業主の義務になりました。
さらに12月には、改正公益通報者保護法も施行を控えています。
ハラスメント対策の網は着実に広がっています。
それでも、網の目からこぼれ落ちる問題があります。
ため息、無視、舌打ちといった態度で周囲を萎縮させる「フキハラ」です。
法律上の定義がないまま、退職や休職を招く例も出ています。
法改正で社内体制を見直すいま、このグレーゾーンにどう向き合うべきかを考えます。
怒鳴らない加害者が、職場をじわじわ壊す
報告に行っても顔を上げない。声をかけると大きなため息をつかれる。書類を無言で突き返される。
どの職場にも、こうした「不機嫌を隠さない人」が一人はいるものです。
しかし、この不機嫌が特定の人や周囲に向けられ、相手を萎縮させたり、必要以上に気を使わせたりするなら、それは「不機嫌ハラスメント(フキハラ)」と呼ばれる問題です。
暴言も暴力もないため、加害者本人に自覚がないことが多く、周囲も「性格の問題」と片付けがちです。
しかし数字を見ると、軽く扱える問題ではありません。
調査が示す、フキハラの広がり
フキハラという言葉を提唱した慶應義塾大学の満倉靖恵教授によると、人の脳はネガティブな感情に敏感に反応し、他人の不機嫌に無意識に同調してしまうといいます。
一人の不機嫌がチーム全体に広がる「不機嫌のパンデミック」が起こりうるわけです。
調査結果もこれを裏づけています。
エムフロ社の調査(500人対象)では、働く人の74.6%が「職場にフキハラをする人がいる」と回答しました。
KiteRa社の調査では、受けた言動をきっかけに退職を考えた人が45.8%、ため息・舌打ち・挨拶の無視を受けた人に限ると51.8%に上ったと報じられています。
フキハラの加害者は、上司とは限りません。
成果を上げている優秀な若手社員が、意見が通らないたびに露骨に相手を無視し、被害を受けた課長が休職に至ったケースもあります。
「数字を出しているから」と周囲が見て見ぬふりをし、会社も放置してしまうことが、被害を深刻にします。
加害者の約6割は「習慣」で不機嫌を使っている
性格的要因:感情の起伏が大きい、物事を悲観的に捉えやすい
環境的要因:家庭の事情や健康状態など、不機嫌を生む背景がある
習慣的要因:不機嫌でいれば周囲が自分の意に沿ってくれると学び、態度が定着している
最も厄介なのは習慣的要因で、フキハラをする人の約6割がこのタイプだといわれます。
本人にとって不機嫌は、無意識に身についた「周囲を動かす手段」になっているのです。
一方、体調不良やストレス、評価への不満、支配欲などが原因となっている場合もあります。
原因が体調や業務過多にある場合、まず必要なのは懲罰より健康管理や業務量の調整です。
原因の見極めを誤ると、対応が的外れになります。
法律は追いついていない。では、救済は?
ここ数年で、ハラスメント対策は法制度として整ってきました。
パワハラ、セクハラ、マタハラ、育介ハラは防止措置が義務化されています。
さらに2026年10月1日、改正労働施策総合推進法の施行により、カスタマーハラスメント対策と求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が新たに事業主の法的義務となり、対象は労働者を1人でも雇用するすべての事業主で、中小企業への猶予期間もありません。
ところが、フキハラそのものを定義した法律はありません。
もちろん、すべてが「法の外」というわけではありません。
パワハラの定義は「優越的な関係」を背景にした言動を対象としており、上司から部下への場合に限られません。
業務に必要な知識や経験を持つ同僚・部下による言動が、パワハラにあたる場合もあります。
無視や仲間外れは「人間関係からの切り離し」、威圧的な態度は「精神的な攻撃」に該当しうるからです。
ただし、フキハラは「グレーゾーン」の典型で、パワハラに該当するかの判断は個別事情によります(判断に迷う場合は社会保険労務士・弁護士にご相談ください)。
実際、被害が深刻化した例も報じられています。
上司のフキハラを受けた東京ガス子会社の出向社員が2018年にうつ病を発症して亡くなり、遺族が起こした行政訴訟で2026年4月に労災を認める判決が出ました。
2025年11月には、栃木県内の自治体職員が部下からの日常的なフキハラで休職に追い込まれ、本人訴訟で和解を得ています。
ただ、裁判まで至る被害者は例外です。
証拠が集めにくく、弁護士からも「立証が難しい」と断られることがあります。
藤原規眞弁護士は、「法的措置を取る」と伝えただけで加害者が退職した事案を挙げつつ、実際に提訴となれば不安があったと明かしています。
被害者が泣き寝入りする前に、社内で拾い上げる仕組みが必要です。
会社がやるべきは「訴訟になる前の仕組みづくり」
フキハラは、被害者が声を上げにくいハラスメントです。
「ため息くらいで相談するのは大げさだと思われる」「相談したら自分が悪者になる」と考えて、そのまま辞めてしまう人が少なくありません。
だからこそ、企業に求められる対応は大きく3つあります。
ルールの明確化:就業規則やハラスメント防止方針に、無視や威圧的な態度といった非言語的な行為も問題になると明記する
早期発見:サーベイや相談窓口で、数字や声から「職場の空気の悪化」を拾い上げる
事実確認と是正:記録に基づき、原因(体調・業務過多・習慣など)を見極めたうえで指導・環境調整を行う
しかし、実際にはここで壁にぶつかります。
社内の人事部に相談すると、加害者が上司だった場合に不利益を恐れる、社内の人間関係が絡んで声を上げにくい、人事担当者自身が判断に迷う、といった事情があるためです。
解決の糸口は「社外に相談できる窓口」
そこで有効なのが、社外の第三者が受け付ける通報・相談窓口です。
社内の窓口は、通報者が特定されることへの不安や、関係者への配慮から使われにくいことがあります。
社外窓口なら、「上司の不機嫌を相談したら評価に響くのでは」「どうせ握りつぶされる」といった心理的ハードルを下げられます。
窓口の利用状況や相談の傾向は、組織の「見えない不調」を知る手がかりにもなります。
株式会社HRマネジメントの「社外内部通報制度・内部監査支援」は、まさにこうした課題に向けたサービスです。
従業員が安心して相談できる社外の通報窓口を設けるとともに、内部監査によって実際の運用状況まで確認し、ハラスメントや不正行為などの組織リスクを早期に発見・対応することを目的としています。
特徴は次の通りです。
窓口を置いて終わりではない:相談の受付にとどまらず、原因分析・改善提案・再発防止まで支援する。フキハラのように原因が複合的な問題では、この「その後」が欠かせない
実務経験に基づく支援:20年以上、労務・コンプライアンス業務に携わってきた経験を生かし、実務に即した対応をする
内部監査で「見えないリスク」を可視化:制度や規程の有無だけでなく、実際に運用されているかを確認する
導入しやすい:初めて内部通報制度を導入する企業にも、制度設計・運用フロー・従業員への周知方法まで支援する。内部通報と内部監査のどちらか単独でも相談可能
なお、同サービスは通報内容の整理、対応方針の助言、再発防止策の提案を行う支援サービスで、調査や処分を行う主体はあくまで企業です。
人事専門の担当者が、企業が適切に対応を進めるための伴走役を務めます。
2026年12月、内部通報をめぐる環境がさらに変わる
追い風となる動きもあります。
改正公益通報者保護法は2026年12月1日に施行される予定で、一定のフリーランスが保護対象に加わるほか、通報妨害・通報者探索の禁止、公益通報を理由とする解雇・懲戒への刑事罰の新設などが盛り込まれています。
刑事罰は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。
なお、従業員301人以上の事業者には、すでに内部通報体制の整備が義務づけられています。
ここで一点、誤解しないでおきたいことがあります。
公益通報者保護法が直接保護するのは、法令違反に関する通報です。
フキハラ自体は、必ずしも公益通報の対象になるとは限りません。
ただ、窓口を一本化して「何でも相談できる」状態をつくれば、フキハラのようなグレーゾーンの相談から、より重大な不正やハラスメントの兆候まで、早い段階でつかめるようになります。
法改正を、窓口の見直しの好機として捉えるのが現実的です。
まとめ:「寝た子を起こす」ことを恐れない
・フキハラは法律上の定義がなく、救済も後手に回りやすい。しかし、離職・休職・生産性低下という実害は大きい
・加害者の多くは無自覚で、原因の見極めを誤ると対策が空回りする
・2026年10月にカスハラ等の対策が義務化され、12月には公益通報者保護法の改正が控える。ハラスメント・通報体制を整える絶好のタイミングである
・被害者が泣き寝入りする前に、社外に相談できる窓口と、その後の改善まで見据えた仕組みを持つことが有効な備えになる
「うちは大丈夫」と思っている職場ほど、声が上がっていないだけかもしれません。まずは、自社の相談窓口が実際に使われているかを確認することから始めてみてはいかがでしょうか。
【参照元】
Yahoo!ニュース|舌打ち、溜め息、無視…全国の職場に蔓延する「不機嫌ハラスメント」の深刻な実態。仕事をしている人の約75%が「職場に“フキハラ”をする人がいる」
カオナビ|不機嫌ハラスメント(フキハラ)とは? チェック項目と対処法
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