こんにちは!HRマネジメント編集部です。
顧客からの暴言・威圧・過度な要求などの迷惑行為(カスタマーハラスメント=カスハラ)は、いまや企業が正面から向き合うべき経営課題になりました。
改正労働施策総合推進法と指針により、令和8年(2026年)10月1日から、カスハラ防止のための措置が事業主の義務になります。パワハラ防止と同じく、「雇用管理上の措置義務」として位置づけられるものです。
本記事では、厚生労働省の資料をもとに、カスハラの定義、企業が必ず講じるべき措置、そしてサービス業・人材業が特に注意したいポイントを整理します。
カスハラ状況:相談件数は依然として高止まり
厚生労働省の実態調査では、過去3年間に従業員からカスハラの相談を受けたことがある企業は3割近くにのぼり、そのうち2割強の企業で相談件数が増えています。
政府広報オンラインでは、この割合を27.9%と紹介しています。
特に、継続的・執拗な言動、威圧的な言動、精神的な攻撃が多く報告されています。
増えているカスハラの傾向
– SNSでの晒し・誹謗中傷
– 長時間の拘束・執拗なクレーム
– 威圧的な言動・暴言
– 過度な補償要求
– 個人情報の要求(名札・フルネーム・担当者の連絡先など)
東京都の「カスハラ支援ナビ」でも、
“要求内容が不当”かつ“手段が不当”なケースが増加していると指摘されています。
10月1日から何が変わるのか
これまで、カスハラへの対応は多くの企業で「現場任せ」「個別対応」になりがちでした。
令和8年(2026年)10月1日以降は、事業主が方針の明確化、相談体制の整備、事後対応、抑止のための措置を必ず講じなければなりません。
あわせて、電話やSNSなどインターネット上で行われる言動も、対象に含まれます。
カスハラに該当する行為とは?
まず押さえたい「カスハラ」の定義
厚生労働省は、職場におけるカスハラを、次の3つの要素をすべて満たすものと定義しています。
•①顧客等の言動であること
•②労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして、社会通念上許容される範囲を超えていること
•③労働者の就業環境が害されること
要素をすべて満たさない場合は、カスハラに当たりません。正当なクレームや意見までを一律に排除するものではない点に注意が必要です。
「顧客等」に含まれる人
顧客だけでなく、取引の相手方、施設(駅、空港、病院、学校、福祉施設、公共施設など)の利用者、その他事業に関係を有する人が含まれます。
今後、商品を購入したりサービスを利用したりする可能性がある人も対象です。
カスハラに該当し得る行為
(1)要求内容が社会通念上許容される範囲を超えるもの
• そもそも要求に理由がない、または商品・サービスと全く関係のない要求(個人情報の開示、私的な依頼など)
• 契約等で想定しているサービスを著しく超える要求
• 対応が著しく困難、または不可能な要求
• 不当な損害賠償要求(瑕疵がないのに過剰な補償を求める、など)
(2)要求の手段・態様が社会通念上許容される範囲を超えるもの
• 身体的な攻撃:暴行、傷害など
• 精神的な攻撃:脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要など
• 威圧的な言動
• 継続的・執拗な言動:何度も繰り返される電話やメールなど
• 拘束的な言動:不退去、居座り、監禁など
(3)犯罪に該当する可能性がある行為
上記のうち、次のような行為は刑事事件に発展する可能性があります。
厚生労働省の資料でも、犯罪に該当し得る言動は警察へ通報することが、あらかじめ定める対処の例として挙げられています。
• 暴行罪・傷害罪
• 脅迫罪
• 名誉毀損罪・信用毀損罪
• 業務妨害罪
「要求の内容」と「手段・態様」は分けて考えます。要求そのものが正当でも、手段が社会通念上許容される範囲を超えていれば、カスハラに当たり得ます。
義務化で企業が求められる措置
2026年10月1日から、事業主は次の10の措置を必ず講じなければなりません。
従来の記事でご紹介していた7項目から、資料に沿って整理し直しています。
方針の明確化及びその周知・啓発
①カスハラには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発する
②カスハラの内容と、あらかじめ定めた対処の内容を労働者に周知する
(例:管理監督者に対応方針を仰ぐ/可能な限り一人で対応させない/犯罪に該当し得る言動は警察へ通報する/本社・本部へ情報共有して指示を仰ぐ)
相談体制の整備
③相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する
④相談窓口の担当者が、適切に対応できるようにする
事後の迅速かつ適切な対応
⑤事実関係を迅速かつ正確に確認する
⑥被害を受けた労働者に対する配慮のための措置を行う
⑦再発防止に向けた措置を講ずる
対応の実効性を確保するための、カスハラの抑止のための措置
⑧特に悪質と考えられるカスハラへの対処方針をあらかじめ定めて労働者に周知し、その対処を行うことができる体制を整備する
そのほか併せて講ずべき措置
⑨相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知する
⑩相談したこと等を理由として不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発する
実務で押さえたいポイント
① 方針の策定と周知(措置①②)
• カスハラを許容しない姿勢を明文化し、社内掲示・研修・イントラなどで周知する
• あらかじめ定めた対処(一人で対応させない、管理監督者に指示を仰ぐ、警察へ通報する、本部へ共有する)まで具体的に周知する
• 顧客向けの掲示(店頭・Web)も、抑止の面から有効
② 相談窓口の設置と担当者の育成(措置③④)
• 人事・管理職・外部窓口を併用し、相談しやすい導線をつくる
• 担当者が適切に対応できるよう、対応基準の共有や研修を行う
③ 事後対応の手順整備(措置⑤⑥⑦)
• 初期対応の基準、記録の取り方、エスカレーションフローを整備する
• 被害を受けた従業員には、心理的ケア、シフト調整・配置転換、二次被害の防止などの配慮を行う
• マニュアルの改善、事例共有、顧客への注意喚起で再発を防ぐ
④ 悪質なカスハラへの対処方針(措置⑧)
今回の義務化で特に重要なのが、この措置です。「どのような場合に、誰が、どう対処するのか」(たとえば、対応の打ち切り、警察への相談・通報など)を事前に決め、従業員に周知したうえで、実際に動ける体制を整えておく必要があります。
⑤ プライバシー保護と不利益取扱いの禁止(措置⑨⑩)
• 相談者のプライバシー保護のために必要な措置を講じ、周知する
• 相談したことを理由に、従業員を不利に扱わないことを明文化し、周知・啓発する
対策を進めるうえでの留意点
消費者の権利や、障害者差別解消法への配慮
障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止や、合理的配慮の提供義務に留意する必要があります。カスハラ対策の名目で、正当な要望や配慮の求めまで一律に排除しないようにしましょう。
- 取引先からの協力要請
自社の労働者が取引先など他社の労働者にカスハラを行った場合、その取引先の事業主から事実確認などの協力を求められたときは、応じるよう努めなければなりません。
サービス業・人材業が2026年に特に注意すべきポイント
(1)SNS・オンライン上の言動への備え
厚生労働省の定義には、電話やSNSなどインターネット上の言動も含まれます。SNSでの晒しや誹謗中傷は、従業員の就業環境を大きく損ないます。対応方針に、オンライン上の言動をどう扱うかも盛り込んでおきましょう。
また、実務上の工夫として、名札のフルネーム表記を見直す(イニシャルや番号にする)企業もあります。※この点は厚生労働省の資料には記載がなく、各社の判断による対応です。
(2)初期対応の質を、個人任せにしない
初期対応が現場の判断だけに委ねられていると、対応がばらつき、事態が悪化しやすくなります。今回の措置②で示されているように、「その場で管理監督者に指示を仰ぐ」「可能な限り一人で対応させない」「本社・本部と情報共有する」といった基本ルールを決め、初期対応マニュアルに反映しておきましょう。
(3)人材業は「二方向のカスハラ」と、求職者等へのセクハラ対策に注意
人材紹介・人材派遣・採用代行などの人材業では、カスハラが複数の方向から起こり得ます。「顧客等」には取引の相手方や事業に関係を有する人が含まれるため、次のような言動も対象になり得ます。
• 求職者からの暴言・執拗な連絡
• 派遣先企業(取引先)からの不当な要求
• マッチングが成立しなかった場合の逆恨み
契約書や利用規約に、カスハラへの対応に関する条項を盛り込む企業もあります。※これも厚生労働省の資料に定めのない実務上の検討事項です。
同じ10月1日から義務化:求職者等に対するセクハラ対策
改正男女雇用機会均等法と指針により、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置も同日から義務になります。採用に関わる企業や人材サービス会社にとって、カスハラ対策とあわせて確認が必要です。
• 対象となる「求職者等」:求職者(企業の求人に応募する人)のほか、採用に資する活動に参加する人、教育実習・看護実習などを受ける人
• 対象となる「求職活動等」:面接、就職説明会、社員への訪問、インターンシップ、実習など。SNSなどオンラインを介したものも含まれます
• 講ずべき措置(要点):
– セクハラを行ってはならない方針と、行為者への厳正な対処方針を明確にし、労働者に周知・啓発する
– 面談の時間・場所、実施体制、やり取りに使うSNSの種類など、求職活動等に関するルールを定め、労働者と求職者等に周知する
– 求職者等向けの相談窓口を定めて周知し、担当者が適切に対応できるようにする
– 事実関係の確認、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止を行う
– 相談者のプライバシーを保護し、事実確認への協力を理由とする不利益取扱いをしない旨を定めて周知する
(4)管理職の“盾”としての役割
「管理監督者に指示を仰ぐ」「一人で対応させない」という基本ルールが機能するかどうかは、管理職の対応力にかかっています。管理職が現場任せにせず、組織として対応できるよう、管理職向けの研修を強化しましょう。カスハラの定義、初期対応のロールプレイ、悪質なケースの判断基準などを、あらかじめ共有しておくことが重要です。
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まとめ:2026年は「実効性の年」へ
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10月1日の義務化を境に、問われるのは「対策を整えたか」だけではなく、「機能しているか」です。
方針を掲げるだけでなく、現場が迷わず動ける手順と、従業員が安心して相談できる体制をつくることが求められます。
カスハラ対策は、次のすべてにつながる“投資”です。
カスハラ対策は、
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- ・従業員の安心
- ・離職率の低下
- ・顧客満足度の向上
- ・ブランド価値の向上
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すべてにつながる“投資”です。
サービス業・人材業は特にリスクが高いため、
2026年の今こそ、実効性のある仕組みづくりが競争力の源泉になります。
【参照元】
政府広報オンライン|カスハラとは?
東京都産業労働局|カスタマーハラスメントを知る
厚生労働省|令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!
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