こんにちは!HRマネジメント編集部です。
近年、人事担当者や経営層の間で「静かな退職」という言葉が急速に注目を集めています。
表面的な離職は増えていないにもかかわらず、組織内部ではモチベーション低下や主体性の欠如といった“見えない問題”が広がっているためです。
この背景には、単なる働き方の変化だけでなく、従業員の価値観そのものの変化があります。
パーソル総合研究所の調査によると、「働くことを通じた成長が重要」と考える正社員の割合は初めて7割を下回り、過去最低を更新しました。
かつて主流だった「成長したい」という意欲は、確実に低下しています。
つまり、静かな退職は一過性のトレンドではなく、人材観・仕事観の変化が引き起こした構造的な問題です。
本記事では、静かな退職の本質を人事視点で解説し、組織として取り組むべき具体的な対策まで体系的に整理します。
静かな退職(Quiet Quitting)とは
定義と背景
静かな退職とは、従業員が契約上求められる業務のみをこなし、それ以上の努力やコミットメントを行わない働き方を指します。
・退職はしない
・仕事もこなす
・しかし「それ以上はやらない」
という状態です。
この概念はSNS発祥ですが、日本でも急速に浸透しています。特に、「仕事に人生を捧げない」という価値観の広がりが背景にあります。
実際の退職や怠慢との違い

重要なのは、静かな退職は「問題行動として表面化しにくい」ことです。
従業員のメリット・デメリット
メリット
・ワークライフバランスの確保
・ストレス軽減
デメリット
・キャリア停滞
・評価低下
・学習・成長機会の減少
特に重要なのは、学ばなくなるリスクです。実際に「自己啓発をしていない正社員」は53.6%と過去最高となっています。
静かな退職が企業にもたらす影響
生産性低下・組織の低体温化
静かな退職の本質は「努力の放棄」ではなく、期待値以上の価値創出の停止です。
・改善提案が出ない
・主体性が失われる
・業務が形骸化する
結果として、組織全体が「低体温化」していきます。
負担の偏りと優秀人材の離脱
静かな退職者が増えると、
・意欲ある社員に業務が集中
・不公平感が生まれる
・ハイパフォーマーが疲弊・離職
という負の連鎖が起きます。
イノベーションの停止
発言・挑戦・提案が減少することで、
・新規事業が生まれない
・改善文化が消える
・「現状維持企業」になる
というリスクがあります。
従業員が静かな退職を選ぶ主な原因
ここで重要なのが、「原因は個人ではなく組織構造にある」という点です。
① 評価への不信
若手を中心に、
・成果が評価されない
・年功序列が残っている
という不満が強まっています。
実際に20代では「個人の成果で評価されない」が転職理由の上位に入っています。
② 成長意欲の低下(重要ポイント)
最も注目すべき変化はここです。
・成長を重視する人:68.8%(過去最低)
・5年間で13.3ポイント低下
さらに、成長の中身も変化しています。
昔:
市場価値を高めたい
スキルを伸ばしたい
現在:
業務をうまく回せるようになりたい
周囲とうまくやりたい
つまり、成長が「目的」から「手段」に変わったと言えます。
これにより、過剰に働く理由が消失しています。
③ ワークライフバランス志向
・残業回避
・プライベート優先
・過剰適応しない
これはZ世代だけでなく、全世代に広がっています。
④ 信頼関係の欠如
・上司と話せない
・意見が通らない
・何のために働くか分からない
→ 結果:心理的離脱(=静かな退職)
⑤ 人材の多様化(構造要因)
調査では、女性・シニア層で割合が高いとされています。
理由は、
・育児・介護との両立
・働き方制約
やる気ではなく“制約”で起きているケースも多いと言えます。
これは人事にとって極めて重要な視点です。
静かな退職の「質」は変化している
特に重要なのがここです。
静かな退職は単一ではなく、3タイプに分類されます。
・戦略型:成果も幸福も高い
・割り切り方:成果高・満足低
・無気力型:成果低・満足低
問題は、
無気力型が29.3% → 41.8%に急増
つまり今起きているのは、
効率志向ではなく「やる気喪失」へのシフトです。
静かな退職の兆候
・業務範囲外を拒否
・会議で発言しない
・定時退社の徹底
・学習や自己成長の停止
特に「学ばなくなる」は重要な危険信号です。
企業が取り組むべき対策
① 評価制度の再設計
・成果と報酬の連動
・プロセス評価の可視化
・納得感のあるフィードバック
→ 若手は「公平性」に非常に敏感
② 1on1の質の改善
単なる面談ではなく、
・キャリア視点の対話
・感情の言語化
・本音の引き出し
が重要です。
③ 挑戦機会の設計(重要)
調査から明確なのは、
→処遇改善だけでは足りない
必要なのは
・新しい業務機会
・裁量のある仕事
・副業・越境機会
特に20代男性では、
・「挑戦したい」
・「早く成長したい」
という動きも見られています。
④ 学習・成長の再設計
・リスキリング支援
・業務内学習の設計
・時間確保
→「学ばない構造」を壊す必要がある
⑤ 働く意味の再定義
最大の核心です。
今起きているのは、
→ 「なぜ働くのか」が変わったこと
企業は
・社会的意義
・個人の価値実現
・キャリアの接続
を示す必要があります。
まとめ(人事向けアクション)
・静かな退職は構造問題であり個人の問題ではない
・成長意欲の低下が最も大きな背景
・「やる気のある人を増やす」ではなく「やる気が下がる構造を直す」ことが重要
・無気力型の増加が最重要リスク
・対策は「評価・対話・機会設計・意味付け」の4点
これからの人事に求められるのは、「働かせる」ことではなく、 “働く意味を設計すること”です。
静かな退職は、組織からの静かな警告でもあります。
この変化を正しく捉えた企業だけが、これからの人材獲得・定着競争を勝ち抜くことができるでしょう。
HRマネジメント では、
採用支援、制度設計、研修、人事労務サポートを通じて、
企業の「働きやすい組織づくり」と「人材の活躍基盤」を総合的に支援しています。
まずは資料一覧から、気になるサービスをチェックしてみてください。
【参照元】
Yahoo!ニュース|「静かな退職」はなぜ増えたのか 10年データで見えた働き方の変化
リクルートマネジメントソリューションズ|静かな退職(クワイエット・クィッティング)とは? 企業のリスクや対処方法を解説
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