こんにちは!HRマネジメント編集部です。
生成AIの急速な普及により、新卒採用におけるエントリーシート(ES)の位置づけは、大きく揺らいでいます。
文章の構成や表現力に優れたESを、短時間で生成できる環境が整ったことで、採用担当者からは、
・内容が整っている一方で、個性が見えにくい
・どこかで見たような志望動機が増えている
・実際に会ってみると印象が大きく異なる
といった声が多く聞かれるようになりました。
これは学生の問題というよりも、「書類で人を見極める」という採用手法そのものが、生成AI時代に適合しづらくなっていることを示しています。
こうした背景の中、ロート製薬が打ち出した新しい採用の取り組みが、今、人事業界で注目を集めています。
ロート製薬が導入する「エントリーミート採用」とは
ロート製薬は、2026年1月より新卒採用において
「エントリーミート採用」と呼ばれる新たな選考方式を導入します。
この取り組みの最大の特徴は、従来のエントリーシートによる書類選考を廃止し、最初のステップとして15分間の対話(面談)を行う点にあります。
この15分間は、合否を即座に決める場というよりも、
・学生がどんな価値観で働きたいと考えているのか
・どのような未来に関わりたいのか
・ロート製薬の事業や考え方に、どの部分で共感したのか
といった点を、双方向で確認するための「出会いの場」として設計されています。
評価されるために正解を答えるのではなく、
「この会社で働く未来を、互いに具体的に想像できるか」
を重視する姿勢が、この採用方式の根底にあります。
「選ぶ採用」から「確かめ合う採用」へのシフト
エントリーミート採用が示しているのは、単なる選考フローの変更ではありません。
それは、採用に対する考え方そのものの転換です。
従来の新卒採用では、
・企業が学生を評価・選抜する
・学生は企業に合わせた回答を用意する
という一方向的な構図になりがちでした。
一方で、ロート製薬の取り組みは、
「企業と学生が、共に働く可能性を確かめ合う」ことを起点にしています。
生成AIによって情報取得や文章作成が容易になった今、
「何を書けるか」よりも
「なぜそう考えているのか」「何を大切にしているのか」
といった、対話でしか見えない要素の価値が相対的に高まっていると言えるでしょう。
採用実務への影響|企業側に求められる変化
エントリーミート型の採用を導入する場合、企業の採用実務にはいくつかの変化が生じます。
書類に依存しない選考プロセスの再設計
まず、ESを前提としない場合、
「どの段階で、何を基準に判断するのか」を改めて整理する必要があります。
・初期接点では合否を出さない
・次の選考に進める理由を言語化する
・評価よりも理解を重視する
といった設計が求められます。
面談担当者の力量が、採用の質を左右する
対話を重視する採用では、面談担当者の質問力・傾聴力・整理力が、評価の質に直結します。
そのため、
・評価観点の標準化
・質問ガイドラインの整備
・面談後の振り返り設計
など、人事担当者の育成や仕組みづくりが不可欠になります。
入社後ミスマッチ防止への期待
価値観や働き方への考えを初期段階で共有できることで、入社後の「思っていたのと違う」といったミスマッチを防ぎ、結果として定着率向上につながる可能性もあります。
学生側に起こる変化|「書く力」から「語る力」へ
学生にとっても、採用の前提は変わりつつあります。
エントリーミート採用では、
・文章を整える力
・就活対策としての表現テクニック
よりも、
・自分は何を大切にしているのか
・どんな環境で力を発揮したいのか
といった自己理解と言語化力が問われます。
これは一見ハードルが高く見える一方で、型通りのESに馴染めなかった学生にとっては、個性を直接評価される機会が広がるとも言えるでしょう。
他社への波及はあるのか|現実的な広がり方
ロート製薬のような大手企業であっても、すべての選考を対話型にするには、工数や体制面の課題があります。
そのため今後は、
・初期接点のみ対話型に切り替える
・一部職種・一部学生に限定して導入する
・中堅・ベンチャー企業が差別化施策として先行導入する
といった形で、段階的に広がっていく可能性が高いと考えられます。
採用市場全体も、「合格するための対策」から「共に働く未来を描く場」へと、少しずつ変化していく兆しが見え始めています。
実務対応チェックリスト|対話型採用を検討する企業へ
✓ 面談担当者ごとの評価ブレを防ぐため、評価基準を言語化しているか
✓ 面談内容を記録し、後工程に活用できる仕組みがあるか
✓ 学生向けに「なぜ書類選考を行わないのか」を説明できているか
✓ 他社事例やトレンドを継続的にウォッチできているか
対話型採用は、導入そのものよりも設計と運用が成否を分けます。
まとめ|生成AI時代に、採用で本当に問われるもの
ロート製薬の「エントリーミート採用」は、
生成AI時代における採用改革の象徴的な事例と言えるでしょう。
効率化や自動化が進むほど、最後に価値を持つのは「人と人が直接話すこと」。
採用は今後、評価の技術から、関係性をつくるプロセスの設計へと、進化していくのかもしれません。
企業と学生が、共に働く未来をどれだけ具体的に描けるか。
その問いが、これからの採用の質を左右していきそうです。
対話型採用や選考プロセスの再設計は、「重要だと分かっていても、日々の実務の中では手が回らない」という声も少なくありません。
・選考フローをどう設計すればいいのか
・面談の評価基準をどう統一すべきか
・人事の工数を増やさずに運用できるのか
こうした課題に対し、採用実務を一部切り出し、専門チームと進める「採用代行(RPO)」という選択肢があります。
当社では、採用計画設計から選考フロー改善、面談設計・運用支援まで、
企業ごとの採用方針に合わせた柔軟なサポートを行っています。
「自社に合った採用のかたち」を模索している段階でも構いません。気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。
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