こんにちは!HRマネジメント編集部です。
企業の労務対応には、「従業員数」ごとに発生する義務があります。
労働基準監督署やハローワークへの届出、衛生管理体制の整備など、人数によって求められる内容が変わるため、正確に把握しておくことが重要です。
2025年は、電子申請(e-Gov・e-Tax)義務化の拡大や障害者雇用率引き上げなど、実務上の変更点も増えています。
本記事では、従業員数1人~50人までの会社で必要となる主な対応項目を最新情報で整理しました。
それでは見ていきましょう!
従業員人数別対応項目(従業員数1~50名)
従業員1人以上
★36協定届出(時間外・休日労働に関する協定)
・時間外労働や休日出勤を行う従業員が1人でもいれば、労働基準監督署への届出が必要。
・管理監督者のみの場合は不要。
・労働組合がない場合、従業員代表(2人以上の場合)の選任が必要。
・届出は 電子申請(e-Gov)対応可。
従業員10人以上
★就業規則・給与規程などの届出
・10人以上の従業員を常時使用する事業場では、就業規則・賃金規程などを労基署へ届出が必要。
・新規作成・変更時のいずれも届出義務あり。
・2025年以降はe-Govでの電子届出が推奨され、紙提出よりも処理が迅速。
※「常時使用」とは、継続的に雇用されている状態を指し、雇用形態に関係なくカウントされます。
※企業全体ではなく、各事業場(営業所・工場など)ごとに行います。
たとえば、本社に8人、支店に5人いる場合
本社:就業規則の作成義務なし
支店:就業規則の作成義務あり(5人以上)ではなく、10人未満なので義務なし
「事業場」とは、継続的に経済活動を行う場所を指し、物理的に独立していれば別事業場とみなされます。
従業員10~49人
★衛生推進者の選任
・常時10人以上50人未満の事業場では、衛生推進者の選任が必要。
・届出は不要だが、社内掲示による周知義務あり。
・衛生管理者資格を持つ者がいる場合も、別途衛生推進者の選任・周知が必要。
従業員31人以上
★高年齢者雇用状況報告(高年齢者雇用状況等報告書)
・毎年6月1日時点での高年齢者の雇用状況を、ハローワークへ報告。
・定年年齢・再雇用・70歳までの就業確保措置などを含む。
・2025年度から、報告フォーマットがデジタル化され、電子申請が主流に。
主な「例外」や「対象外」となるケース
以下のような場合は、従業員が31人以上でも報告義務の対象外となることがあります。
1. 「常時雇用する労働者」に該当しない者はカウントしない
・1年以上の雇用見込みがない者
・週の所定労働時間が20時間未満の者
・短期雇用・臨時雇用のアルバイト・パート
※雇用保険の加入要件に準じて判断されます。
2. 事業場単位ではなく「企業単位」でのカウント
報告義務は「企業単位」で判断されるため、複数の小規模事業場に分かれていても合計で31人以上なら対象になります。
3. 雇用保険未加入の法人・個人事業主
雇用保険に加入していない場合、報告書が送付されないことがあります(ただし義務が免除されるわけではない)。
4. 新設・廃止直後の事業所
6月1日時点で事業を開始していない、または廃止している場合は対象外。
5. 報告対象外の法人形態
一部の非営利法人や宗教法人など、労働者を雇用していない法人は対象外。
従業員40人以上
★障害者雇用・雇用状況報告(障害者雇用状況報告書)
・2025年4月から民間企業の法定雇用率が2.5%へ引き上げ。
・常用労働者40人以上の企業は、障害者を少なくとも1人以上雇用する必要あり。
・毎年6月1日時点の状況をハローワークに報告(電子申請対応可)。
・未達の場合は「障害者雇用納付金制度」の対象となる可能性あり。
従業員50人以上の対応項目は?
従業員が50人を超えると、労務関連の義務が一気に増えます。
★衛生管理者の選任・届出
・衛生管理者資格(第一種・第二種保有者)を選任し、労働基準監督署へ届出。
・業種によって必要資格・人数要件が異なるため注意。
★産業医の選任・届出
・産業医資格または労働衛生コンサルタント登録を持つ医師を選任・届出。
・嘱託産業医でも可(常勤不要)。
★衛生委員会の設置・運営
・毎月1回以上開催が義務。
・産業医・衛生管理者・従業員代表の参加が必要。
・議事録を3年間保管・周知義務あり。
★定期健康診断の実施・結果報告
・年1回実施し、結果報告書を労働基準監督署へ提出。
・健診結果の保管期間:5年間。
・業種によって検査項目や頻度が異なる。
★ストレスチェックの実施・報告
・年1回実施。
・受検者がいなくても報告書の提出が必要。
・結果は産業医による評価・フィードバックを実施。
※2025年度以降に50人未満への義務化検討中
2025年に押さえておきたい最新トピックス

対応漏れを防ぐポイント
・従業員数が増えるたびに、「義務発生ライン」を超えていないか確認。
・届出様式や報告期限を年次カレンダー化して管理。
・労務担当者不在の企業は、労務コンサルやRPO活用も検討。
まとめ
従業員数が増えるほど、企業に求められる労務対応は複雑になります。
2025年は電子届出化・障害者雇用率引き上げなど、実務変更が多い年です。
法令対応を怠ると是正勧告の対象になる可能性もあるため、定期的な法改正チェックと社内体制の見直しを行いましょう。
【参照元】
厚生労働省|労働基準法関連届出(36協定・就業規則)
厚生労働省|高年齢者雇用状況報告(様式・記入要領)
厚生労働省|障害者雇用状況報告・法定雇用率
厚生労働省|労働安全衛生法関連(衛生管理者・産業医・衛生委員会)
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