こんにちは!HRマネジメント編集部です。
1987年の大改正以来、約40年ぶりとなる労働基準法(労基法)の大規模な見直しが進行中です。
2026年の通常国会への法案提出が当初予定されていましたが、労働時間規制の緩和と強化の方向性で調整がつかず、提出は見送られました。
しかし、これは改正が延期されたに過ぎず、企業は今から計画的に準備を進める必要があります。
高市総理は施政方針演説で「柔軟な働き方の拡大に向けた検討を進める」と述べ、政府内では日本成長戦略会議や規制改革会議を中心に、労働時間規制の見直しに向けた議論が一段と進む見通しです。
本記事では、経営層・人事担当者が押さえるべき改正の全体像と、各企業が今すぐ取るべき7つの実務対応を、わかりやすく解説します。
改正の背景:なぜ今、労働基準法(労基法)を変えるのか
今回の改正が求められている背景には、日本企業が直面する3つの構造的な課題があります。
働き方の多様化への対応
テレワークや副業・兼業が普及し、従来の「1社専属・定時出社」という働き方が当たり前ではなくなりました。
法律も、こうした現実に合わせて進化する必要があります。
深刻な人手不足への危機感
少子高齢化に伴う労働力人口の減少は、多くの企業にとって最重要課題です。
長時間労働や過度な勤務負担は、人材の確保・定着を困難にする要因となっています。
国際的なスタンダードへの適応
EU諸国を中心に「つながらない権利」や厳格な労働時間管理が法制化されており、日本の労働環境もグローバルスタンダードに合わせる必要性が高まっています。
1987年の改正が主に労働時間の短縮(週40時間制への移行)に焦点を当てていたのに対し、今回の改正は、こうした現代的な課題に対応し、働き方の「質」そのものを再設計することを目指しています。
企業が今すぐ押さえるべき7つの改正ポイント
以下の表は、改正の全体像を一覧にしたものです。各項目の詳細は、この後詳しく解説します。

改正①:連続勤務の上限が「14日」に設定される
これまで明確な規定がなかった連続勤務日数に、「14日以上の連続勤務禁止」という上限が設けられます。つまり、最大13日間の連続勤務までは認められますが、14日目には必ず休日を与える必要があります。
なお、そもそも業務上7連勤が発生する場合には「時間外・休日労働に関する協定届」(36協定)の届出が必要になります。
改正②:「法定休日」の特定が就業規則で義務化される
現在、「週休2日制」としながらも、どちらが法定休日(労基法で定められた休日)で、どちらが所定休日(企業が独自に設定した休日、法定外休日)かが曖昧な企業が多くあります。改正により、就業規則で法定休日を明確に特定することが義務化されます。
1ヶ月変形労働時間制などを適用している場合は、事前のシフト確定の段階で法定休日を定める必要があり、その旨就業規則に明記する必要があります。
改正③:「勤務間インターバル」が努力義務から法的義務へ
終業から次の始業までに最低11時間の休息を確保する「勤務間インターバル制度」が、これまでの「努力義務」から「法的義務」へと格上げされます。例えば、夜22時に退勤した場合、翌日の出社は朝9時以降となります。
変形労働時間制やフレックスでコアタイムをを適用している場合にも注意が必要です。
改正④:有給休暇の賃金算定が「通常賃金方式」に統一される
現在、有給休暇取得時の賃金算定には、「通常賃金方式」「平均賃金方式」「標準報酬日額方式」の3つの方式が混在しています。改正により、原則として「通常通り勤務した場合に支払われる賃金」を支払う「通常賃金方式」に一本化されます。
そのためパート・アルバイトなどシフトにより1日の稼働時間が変動する場合、雇用契約書やシフト確定時に調整が必要です。
改正⑤:副業・兼業の「割増賃金」ルールが簡素化される
副業・兼業者の労働時間管理は、健康確保の観点から引き続き通算されます。しかし、割増賃金の支払いについては、各企業が自社での労働時間に対してのみ支払う形に見直される見込みです。
改正⑥:「週44時間特例」が廃止される
商業、理美容業、旅館業などの一部の中小企業に認められていた「週44時間」の特例措置が廃止され、原則通り「週40時間」制に統一されます。
改正⑦:「つながらない権利」のガイドラインが策定される
勤務時間外や休日に、業務上のメールやチャットへの対応を拒否できる「つながらない権利」について、ガイドラインが策定される見通しです。当初は法的な義務ではなく、労使でルール作りを促すためのものですが、今後、法的な義務化も視野に入っています。
業務上、アプリなどを使用している会社も多いと思いますので、管理者へ時間管理やハラスメントなどと合わせて、いまから研修実施を検討されても良いかと思います。
企業規模別・業種別の対応戦略
改正の影響は、企業規模や業種によって大きく異なります。以下、主な企業規模ごとの対応戦略を示します。
大企業:複雑な制度設計と全社的な統一が課題
主な課題
複雑な人事制度・勤怠システムの改修が必要です。特に、複数の子会社やグループ会社を持つ場合、全社的なルール統一が困難になります。また、既に導入している勤怠管理システムやHRシステムとの連携も考慮する必要があります。
対応の方向性
専門チームを設置し、計画的にシステム改修と規程整備を推進することが重要です。外部の社労士やコンサルタントを活用し、グループ全体でのガバナンスを強化しましょう。
中小企業:人手不足と資金不足の中での対応
主な課題
人手不足、資金不足、専門知識の不足が三重の課題です。特に、勤怠管理システムの導入や就業規則の見直しに必要な費用や人手が不足しがちです。
対応の方向性
外部専門家(社労士など)の活用、クラウド型勤務管理システムの導入、助成金の活用を検討しましょう。商工会議所や中小企業団体中央会などの無料相談も活用できます。
零細企業:経営者自身がプレイングマネージャーの場合
主な課題
経営者自身がプレイングマネージャーであり、管理業務に手が回らないケースが多くあります。また、専門知識がないため、何から始めればよいかわからないという状況も珍しくありません。
対応の方向性
BPO(業務委託)サービスの活用、商工会議所などの無料相談の活用を強くお勧めします。また、小規模企業共済や経営セーフティ共済などの制度も検討の価値があります。
改正への対応ロードマップ:4つのステップで準備を進める
労働基準法(労基法)改正への対応は、計画的に進めることが重要です。
以下の4つのステップを参考に、自社のペースで準備を進めてください。
Step 1(〜3ヶ月):現状把握と課題分析
自社の就業規則、勤怠管理の実態、従業員の労働時間を徹底的に洗い出します。特に、現在の就業規則が改正に対応しているか、勤怠管理システムが改正に対応できるかを確認することが重要です。
Step 2(〜6ヶ月):課題分析と方針決定
労働基準法(労基法)改正内容と自社の現状とのギャップを分析し、対応方針を経営層と合意します。どの改正項目から対応するか、優先順位を決めることが重要です。
Step 3(〜12ヶ月):規程整備とシステム導入
就業規則や関連規程の改定に着手します。同時に、勤怠管理システムを選定・導入し、給与計算システムの設定変更を進めます。
Step 4(施行半年前〜):社内周知と運用開始
従業員説明会や管理職研修を実施し、新しいルールを周知徹底します。試行期間を設け、問題点を洗い出し、本格施行に向けて調整を進めます。
よくある質問と回答(FAQ)
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A
2026年の通常国会への法案提出は見送られましたが、2026年後半から2027年にかけて、再び国会での審議が本格化する可能性があります。企業は「まだ先の話」と捉えるのではなく、今から計画的に準備を進めることが重要です。
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A
はい、今回の労働基準法(労基法)改正は企業規模を問わず、すべての企業が対象となります。特に週44時間特例の廃止は、商業・理美容業・旅館業などの中小企業に大きな影響を与える可能性があります。
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A
社会保険労務士(社労士)への相談が効果的です。就業規則の改定、勤怠システムの選定、従業員への説明会など、包括的なサポートを受けることができます。ただ、社労士に依頼する前に社内で対応案をまとめたい、気軽に相談したい、とお考えであれば、HRマネジメントの労務コンサルへ是非ご相談下さい。
まとめ:労働基準法(労基法)改正は「未来への投資」
労働基準法(労基法)の大改正は、短期的にはコストとして映るかもしれません。
しかし、長期的な視点で見れば、これは従業員が健康で意欲的に働ける環境を整備し、企業の生産性、採用力、そして持続可能性そのものを高めるための「未来への投資」です。
今から計画的に準備を進め、改正に先制的に対応することで、競争力のある企業へと進化させることができます。
【参照元】
Yahoo!ニュース|働き方の多様化で労働基準法改正の議論加速 ~ 日本成長戦略会議などで労働時間規制の緩和を検討 ~
厚生労働省|労働基準関係法制研究会報告書
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